9月17日、リージョナルフィッシュ株式会社が厚生労働省に対し、「ゲノム編集食品」として肉付きを良くしたマダイを申請し、厚生労働省側は従来の品種改良と変わらないため安全性の確認は不要とし、承認されました。
通常のマダイではたらいている成長を抑える遺伝子を抑制することで、筋肉をつきやすくし、養殖の効率を上げることを目標としているそうです。
ゲノム編集マダイ、食卓へ 同じエサ量でも1.2倍肉付きよく (msn.com)
ところで、「ゲノム」と言われて何なのか説明できますか?
似ている言葉に「DNA」「染色体」「遺伝子」などがありますが、その違いは?
今回は、これらの疑問にまとめて答えていきたいと思います!
DNAとは?
DNAとは、デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic Acid)のことで、核酸と呼ばれる物質の一つです。
DNAは基本的に2本が対となって存在しており、特徴的な「二重らせん構造」を有しています。なんとなく「遺伝子と言えば二重らせん構造」と思っている人も多いのではないでしょうか。
また、DNAは「リン酸」「糖(デオキシリボース)」「塩基」の3つのパーツから構成されますが、この「塩基」はアデニン、チミン、シトシン、グアニンの4種類があり、この4種類の違いにより多様な構造を持つタンパク質を合成することができています。
また、似た物質としてRNA(リボ核酸)がありますが、こちらは3つのパーツのうち糖が「リボース」となっています。
染色体とは
染色体とは、タンパク質の一種である「ヒストン」とDNAの複合体のことです。
DNAと同じく、物質の1つの便宜的な呼び名と考えて差し支えないでしょう。
広義には、後述するゲノムも含めたり、ウイルスが持つRNAなども染色体と呼ぶこともありますが、元々は細胞分裂の際に現れるひも状の物質のこと意味します。
遺伝子とは
遺伝子はDNAの配列によって決まる遺伝情報のことです。先に説明したDNAや染色体が物質の名称だったのと比較すると、こちらはやや概念的な意味合いも若干強いです。
また、遺伝情報全体を必ずしも指すわけではなく、「アミノ酸の産生に必要な遺伝子」のようにDNAの一定の領域
DNAの配列の中には、タンパク質を作るための情報をコードする領域(意味のある領域)と何もコードしていない領域(意味のない領域)の2つがあると考えられ、遺伝子は本来意味のある領域だけを指す言葉とされてきましたが、近年は意味がないと考えられていた領域にも役割があるということが分かってきており、遺伝子という言葉の意味合いも揺らいでいます。
とはいえ、日常生活においては「遺伝子=遺伝する因子=DNA」と思っておけば大きく間違うことは無いでしょう。
ゲノムとは
ゲノムとは、生物が持つすべての遺伝情報のことを指します。
これは、遺伝子の項目で述べたような「意味のある領域」と「意味のない領域」をすべて含んだものを指し、より概念的な側面が大きな言葉です。
また、ゲノムの全体像が分かっている生物は現代においてもごくわずかで、ヒトゲノムに関しても2000年代に初めて全体像が発表されたくらいです。
人間以外だと、代表的な実験生物(ショウジョウバエやシロイヌナズナなど)、人間に身近な生物(イヌやネコなどのペット、ウシやブタなどの家畜など)のような、人間にとって有益だと分かっている生き物しか調べられていないのが現状です。
さらに調べたゲノムを研究に生かすとなると、それぞれの遺伝子がどのような役割を担っているかも解明する必要があります。
ちなみに、生物のDNA配列をすべて解明する例えば、ヒトゲノムを解明する計画は「ヒトゲノムプロジェクト」であり、アメリカのエネルギー省と厚労省が合わせて30億ドルもの予算を組んで行われました。
最後に
このように、同じような言葉でも、その意味するところは微妙に違っています。
次回は、ゲノム編集と遺伝子組み換えなど、他の品種改良との違いについて書いてみたいと思います!
遺伝子組み換えやゲノム編集について不安視する声は今でもありますが、「そんな心配しなくても大丈夫!」ということを示せたらと思います。
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