先日、ゲノム編集のマダイが承認され、今後は食卓に並ぶかもしれないと記事に書きました。
さらに、ゲノム編集され、通常より多くの「GABA」を含むトマトが今月に入り販売開始されました。
「ゲノム編集」で品種改良のトマト 一般への販売開始 国内初 | NHKニュース
ただ、「ゲノム編集マダイが承認!」「ゲノム編集トマトが販売開始!」という字面だけだと、いまいちどういうことなのか想像しづらいと思います。また、ゲノム編集や遺伝子組み換えに対して不安に思う人もいると思います。
ということで、今回はゲノム編集について、他の似ている言葉と比較しながら解説したいと思います。
品種改良って?
品種改良とは、人間にとってより有益な特徴(実の収穫量が多い、栄養が豊富など)を持った種を作るために、生き物同士をかけ合わせたり、突然変異を誘発したりすることを言います。
例えば、イネは現在でも別の品種同士を掛け合わせることによる品種改良が盛んに行われています。イヌやネコも、突然変異で偶然発現した特徴(耳折れなど)を持つ個体を意図的に掛け合わせることで、新しい品種が生まれてきました。
このような方法を用いているので、遺伝子の操作は基本的に行われていません。そのため、人間にとって有益な個体を作ろうとする手法の中では最も単純なものと言えます。
遺伝子組み換えって?
遺伝子組み換えは、文字通り、生き物の遺伝子を特定の配列に「組み換える」ことで行います。
遺伝子組み換えの大きな特徴として、「生物がそもそも持っていなかった特徴を、外から遺伝子を持ってくることで与える」というものがあります。
例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質)という元々深海性のクラゲが持つような遺伝子を組み込んだマウスは、緑色に光ります。
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ゲノム編集って?
ゲノム編集は、生物が元々持っている遺伝子を編集して、人間にとって有益な特徴を発現させる手法です。
今回話題となっているマダイは、筋肉の成長を阻害する遺伝子を機能しないよう編集することで、同じ餌でもより効率的に成長できるようにしたものです。
一方で、もともと持っている遺伝子にできること以外はできないので、遺伝子組み換えの項で説明したような「動物を緑色に光らせる」というような破天荒なことはできません。
遺伝子組み換えやゲノム編集食品は食べても安心?
遺伝子が組み変わった食品を食べて、人間に害はないのか気にされる方も多いと思います。
結論から言うと、基本的に大丈夫です!
何故かというと、食べ物を消化する過程で動物のDNA、タンパク質、脂質や糖質など、ほとんどの物質が最小単位まで分解されてしまうからです。
例えば、タンパク質はアミノ酸単位まで、デンプンは単糖単位まで分解されます。これくらいまで分解されたものが、人体の中で
悪さをすることはまず考えられません。
改変された遺伝子によって何か有害物質が産生される可能性はゼロではありませんが、そのような事態は実験段階で軒並み排除されます。また、そのような食品は厚生労働省の承認は下りないでしょう。
つまり、消費者がこれらの食品を手にする頃には、有害事象の心配はほとんど排除されているので、安心して食べてください。
品種改良、遺伝子組み換え、ゲノム編集で動物が苦しむ可能性は?
人為的に肉をたくさんつける、実をたくさん実らせるようになった動植物が苦しむ可能性はないのかと心配する方もいるでしょう。
実際、その可能性はあります。
食品ではありませんが、ネコの品種の1つである「スコティッシュフォールド」は関節異常を引き起こす遺伝子を生まれつき持っています。スコティッシュの特徴である
折れ耳は、関節異常によるものです。
今回のゲノム編集マダイも、もともとそんなに成長できないようにリミッターがあるのに、人の手で勝手にリミッターを解除されているわけです。マダイ自身は、何かしらの苦痛を感じているかもしれません。
これをかわいそうと思うのも結構です。
しかし、人間はそもそも、自身らのエゴによって動植物を繁殖して食べていることを自覚すべきだと思います。勝手に増えておいて「食べ物が足りなくなって困ってます~」って自分勝手ですけど、それを自覚しながら私は今日も肉を食べます。
食べることと人間のエゴについては過去の記事で書いていたので、良かったら併せてご覧ください。
最後に
とにもかくにも、技術の進歩で将来の食糧危機に対応できる可能性が示されたことは素直に喜ばしいことだと思います。
私自身、タイのお刺身などは大好物なので、ゲノム編集マダイのお刺身が食べられる日が楽しみです。
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